つい見落としがちな「振り返りの大原則」

先日、職場の業務改善を専門にされているコンサルタントの方とお話させていただきました。いくつも興味深い現場のお話をしてくださったのですが、特に印象に残っているエピソードがあります。

それが、「人を育てる振り返り」についてです。

その方が例に挙げてくださったのは、巷で「営業会社」として知られる某メーカーでの取り組みです。その会社は直行直帰型の営業スタイルで、長い時で約10時間近くを会社の外で過ごすことになるそうです。当然、上司が部下と顔をあわせる時間は限られています(多くて週3日程度)。そうした環境の下、同社の営業マネジャーはどうやって部下の営業スキルを高めているのでしょうか。

その秘訣は、とてもシンプルな「上司のある問いかけ」にありました。

「昨日、営業先であった出来事を全部教えて」

これだけです。ただただ、営業している間に起こったすべての出来事を時系列で振り返りさせるというわけです。ここでのポイントは、①(意見・解釈ではなく)出来事を振り返ること②(印象に残ったことだけでなく)全てを振り返ること、の2点です。もはや、「振り返ってもらう」というより、「思い出して、そのままを語ってもらう」という方がイメージに近いかもしれません。これだけ聞くと、「え、それだけ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、これがとても重要、かつ、想像以上にみんながつまずくポイントなのだそうです。例えば、このトレーニングを受けたことがない新人の場合だとどうなるか。

まず、だいたいハニワみたいな顔になるそうです(笑)

どんな新人でも、言葉にして説明できるのは、出先であった10時間のうち、せいぜい20分程度のエピソードだそうです。「◯◯な提案をして、△△な意見をもらいました」という象徴的な出来事を断片的に思い返すのがやっととのこと。もちろん、本人はサボっているわけではありません(笑)たった1日前の出来事であっても、それだけ具体的なエピソードを思い出すことは難しいということです。

同社では、この「出来事をあったままに振り返る」というプロセスをとても大事にされているそうで、特に新人のうちは徹底的に、この「振り返りの刑(?)」を受けるそうです。

最初は、出来事を振り返って、言葉にすることに戸惑っていた新人たちも、次第に慣れてくると、自然に振り返ることができるようになるようです。

そしてここからがポイントなのですが、出来事をきちんと振り返ることができるようになると、多くの新人は、自分の営業の課題やクセに「勝手に」気づき、自分で「勝手に」課題を修正することができるようになるというのです。つまり、自分の振る舞いをもう一人の自分が客観的な目でモニタリングできるようになれば、たいていのことは自分で軌道修正できるようになる、ということです。

同社では、上司による具体的な営業の指導をするのは、「部下が出来事をしっかり振り返ることができるようになった後」だそうですが、その段階で必要となる上司の指導はより高度で応用的な話に特化でき(基本的なスキルは部下自ら行動補正できるため指導は不要)、限られた時間の中で効率的な指導ができるようになります。

☆☆☆

人の育成には、よく「リフレクション」と「フィードバック」が重要だと言われます。そして、それらが効果を発揮するには、リフレクション・フィードバックをする対象(多くの場合、「経験した出来事」)が見える化されている、という前提があります。仮に10の経験をしたとしても、当事者である本人自身が2、3程度しか思い出していなければ、そのリフレクションやフィードバックから得られる学びはその範囲でしかなくなります。

このごく当たり前の前提、意外に見落としがちではないでしょうか。

部下をはやく一人前に育てようと、ついアレコレ言いたくなる気持ちをグッと抑え、具体的な課題を指摘する前に、まず出来事の振り返りは十分に足りているのかを問うてみる必要があるのかもしれませんね。

話は変わりますが、私も色々な方のお話をインタビューすることがありますが、自分の記憶が全くあてにならないことは相棒のICレコーダーがはっきりと証明してくれています。帰りの道中に聞き直しただけでも、新たな発見に気づけるぐらいですから(私の記憶力の問題もありますが…)

まずは、自分の記憶に疑いの目を持つことから始めてみることですね(強烈な自戒を込めて)

1 個のコメント

  • 同じ話を聞いていても、自分の気づきと他人の気づきは違う。自分の考えが正しいとは限らない。最後はその人自身が考え、自らがどうあるべきかを気づくことが成長には重要だと思います。

    さとし頑張れ!応援してます。今度本読みます。

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